「命の原点」を伝えたい 監督 齊藤 秀樹
さて今回は、私が学級担任時代に毎年必ず行っていた「生命の学習」について皆さんにお伝えしたいと思います。是非子どもに話してあげてください。
「みんなの命が今ここにあるのはどうして。」「お父さん、お母さんが産んでくれたから。」「じゃあお母さんの命は。」「おじいちゃん、おばあちゃんがいたから。」…このように命をさかのぼっていくと最後には「人間の命の始まりは?」にぶつかります。そこで考古学で明らかにされている人間の命の始まりが、今から二千万年前の猿人であることを教えました。次に自分の生きてきた10年と人間の歴史を分かりやすく比べるために、二千万年を2mとすると10年は0.001㎜ということになり、砂つぶの1/10ほどしかないことを教えました。この針でつついた位の長さから考えると、人間は現在に至るまで、生まれ、育ち、死んでいくという繰り返しを数限りなく重ね、その上に今の自分がいることを、命はずっとつながっていることを伝えました。
次に「自分の歴史をさかのぼろう」ということで、現在4年生、「3年生の頃は何があった。」「1年生の頃は」「幼稚園、保育園の頃は」…を思い出して振り返らせました。「車にはねられそうになった」「ブランコから落ちて大ケガをした」「おたふく風邪の時高熱が出てすごく苦しかった」…今まで様々なことがあったでしょう。もしその時に命を失っていたら、今の自分はここにいなかったことを、お父さんやお母さん、周りの人々がみんなを大切にし、みんなの命を必死で守ってきてくれたことを話しました。
では「みんな命が誕生したのはいつ?」と聞くと、「10年前の誕生日」と誰かが答えたので、すかさず「それは違う」と否定し、「みんなの命は誕生日の前にも、お母さんのお腹の中で10ヶ月間あったんだよ。」と教えました。みんなが10ヶ月入っていたこの部屋を「子宮」と言い、「子どもの宮殿」という名前が付いています。、ふわふわしたとても居心地のいい部屋だそうです。その中で2ヶ月目にはたったの2.5㎝、5ヶ月目でやっと20㎝、10ヶ月たつと身長約50㎝、体重3千グラム位に育って、やっとお母さんのお腹から出てきたんだよ。その日がみんなの誕生日ですと教えました。
女性の体というのはとても不思議なんだけど、普段は指が1本か2本入るかどうかの狭い子宮の出口だけど、赤ちゃんを産むときにはちゃんと開くんだそうです。でもこんな頭が通るくらい大きくなるんだからやっぱり痛くて大変なんだって。お母さんはみんなが出てくる頃になると「陣痛」っていう痛みがきて、それが30分おきとか、10分おき、3分おきと間隔が縮まって、もうじき生まれるっていう時には、お母さんは体中が壊れるんじゃないかと思うくらいの痛みに耐えて、これ以上出せないくらいの力を入れて、みんなが完全に出てくるまでがんばるんです。そしてこの苦しみを乗り越えてようやく生まれた赤ちゃんの顔を見たときは、言葉にできないくらいの感動を味わって涙を流して喜ぶそうです。みんなはそうやって生まれてきたのです。今度お母さんにその時のことを聞いてみてください。という話をしました。
現在の子どもたちは、おじいちゃんおばあちゃんと暮らさなくなり、兄弟が減って赤ちゃんを知らず、人間の生や死に鈍感になっています。自然の中での体験が減り、住宅事情からペットを飼う自由も奪われてしまいました。同時に無差別殺人事件や自殺、親殺しや子殺し(虐待)等のニュース、世界中ではテロや紛争が相変わらず続いています。 こんな時代だからこそ、かけがえのない命、不思議ですばらしい命を伝える必要があると思います。そして命をダメにするものに対して、勇気を持って闘い、自分の命、他人の命を大切にできる、そんな人間に育ってほしいと心から願っています。