シリーズ「子育て講座」⑤ 監督 齊藤 秀樹
【学童期】
《小学校入学~思春期前》
学校は勉強するところです。したがって、この時期は“学ぶことがうれしい時期”と言えるでしょう。「できた」「わかった」「うまくなった」という『有能感』を持たせることが大切です。学校から帰ってきて「お母さん、かけ算の九九が三の段まで言えたよ」と子どもが喜んで報告しているのに、「なんだ、○○ちゃんなんて八の段まで言えるそうよ」などど、劣等感を植え付けるような子育てをしてはいけません。他の子に比べて、多い少ない、早い遅いは個性であって、大切なのは子どものやる気を引き出し、認めて励まし、自信と有能感をいかに伸ばすかということです。
その一つの方法としてお薦めしたいのが、「博士」「名人」「天才」にしてしまうという方法です。昆虫が好きなら「昆虫博士」、鉄道が好きなら「鉄道博士」、「花博士」「星座博士」…「自転車名人」「なわとび名人」「遊びの天才」…。これだけは自信がある、これだけは人に負けない、というものが1つでもあれば、必ず将来、他の分野にも広がっていきます。まあ親としては、「鉄道のことはいいからもっと計算を…」とか「体育はいいから、もう少し国語に関心を…」と割り切れないでしょうが、好きなことをいっぱいさせて、それをどう伸ばすかという気持ちに切り替えられるかがポイントになります。
次に友人の作り方ですが、小学校の低学年と高学年とではずいぶん違います。低学年では、家が近所だからとか、お母さん同士が仲が良いからとか、席が隣になったからというように、非常に「変動的」です。班が変わり、席替えをしたとたんに親友が変わってしまうということが起こります。ところが高学年になると、友人関係の変動も少なくなり、性格が合うからとか、共通の趣味を持っているからというように「固定的」になってきます。
よく保護者の方から、低学年では「ついこの間まで仲良かった子と遊ばなくなってしまった」とか、高学年では「最近、友人関係が固定的になってきて心配です」という相談がありますが、これは発達段階に応じた正常な成長をしている証拠です。
さてこの時期の親は「子どもの成長に関わっているのは自分だけではない」ということを知ることが大切です。教師や友人という存在が今まで以上に大きな役割を果たし、子どもたちはそれらの人間関係の中で「社会性」や「協調性」、そして「社会のルール」を学んでいきます。確かに基本は親子関係であり、これが安定していないと外でも安定した生活を送れない可能性は高いのですが、自分だけが子どもを育て、守ってあげられる唯一絶対の存在であるわけではありません。
子どもは様々な顔を持っています。家の中での顔、学校での顔、習い事での顔、友人と遊んでいるときの顔…。即ち「親の前でいい子」や「親から見ていい子」という評価基準だけでは子どもの実態や変容を正確に理解できないということです。最近とても気になるのが、子どもの外での人間関係に口をはさむ親が増えてきたことです。たしかに子ども同士の人間関係の問題やトラブルを親同士で話し合ったり、学校の先生を含めて問題解決することは時には必要なことでしょうが、ささいなことで日常的に子どもの交友関係に口をはさみ、親の視点で「この子だけがよければいい」という解決の仕方は、子どもの成長にとって決してプラスにはならないのではないかと思います。
この時期は、「自分以外の他者」を含めた様々な人々と関わり、「子どもは自分の子どもだけではない」ことを理解して、適切な距離感を持った子育てが大切だと思います。
つづく