シリーズ「子育て講座①」 監督 齊藤 秀樹
今まで様々な教育相談を行ってきましたが、今の子どもたちの非行や問題行動、不登校という現象は、実は今までの親子関係(子育て)に起因することが多いので、今回から「子育て講座」というタイトルで今までを振り返って行こうと思います。
このシリーズは妊娠、出産、育児、子離れ(自立)等のそれぞれの時期における親としての接し方、育て方、父母の役割についてがメインになりますが、実はその前の原体験(親自身のこども時代)が大きく影響することから、今回はそこから書きていきたいと思います。
【子ども時代の原体験期】
子どもを持つ前の時期(幼少期~青年期)の原体験は極めて重要であり、その後の人生で子どもを持ち、親になるための準備期間となる。人は小さいときから子どもという立場で親と接し、その中で親とどんな関係性を持ったか、親は自分に何をしてくれたかという原体験が心の根底に残っている。子どもができて初めて親になる資質や能力が身につくわけではなく、すでに幼少時代から将来どんな親になるかの芽が育まれはじめているということである。
また周囲の子どもと接するのもこの時期の体験の一つである。弟や妹、親戚の子や近所の子どもたちなど、誰とでもいいから、抱っこをしてあげたり、食べ物を食べさせたり、あやしたり、泣いている子を工夫して泣き止ませたり、勉強を教えてあげたりする。また、子どもにはいろいろなタイプの子がいることや自分の思い通りにいかないことを学ぶ。時には誰かに助けてもらわなければならないこともあるし、我慢もしなければならない。子どもと接するのは楽しいことばかりではなく、嫌なこともあるし、時に自分と相手の主張が合わないときは互いに譲り合いうまく折り合いをつける柔軟性も学ぶ。
こういう経験を通じて、子どもとの距離感を体で学んでいく。近すぎてもいけないし、離れすぎてもいけない。また、子どもは年齢によって気質が異なり、それに応じた距離感が必要なことを知る。これが親になったときに生かされるである。
ある調査によると、親になる前の時期(子ども~成人)において、小さい子どもたちとの接触経験が豊富な人ほど、育児への肯定的な感情が強い傾向があるという興味深い報告がある。
要するに、子ども時代に親から受けた体験や他の子どもとの接触体験が、親になるための準備(無意識にでも)として蓄積されていき、後の子育てにおける態度や行動に大きく影響するということである。
【妊娠期】
このステージは、第一子の妊娠がわかり、初めて親になる直前の時期である。子どもはまだいないが、近い将来親になることは決定している。この間は父親と母親はどちらも独特の心理状態を持ち、今後出現する「父親と母親の違い」はこの時期から現れてくる。
母親は体の変化を直接に感じ、親になることの喜びと期待を持つ。反面、それまでなかった体調不良やストレスを経験する。好きなものを食べたり飲んだりしにくくなり、毎日の体調管理は今までとは比べものにならないほど厳しくなる。仕事をしている母親ならば、今後の仕事の継続も考え直す必要が出てくる。
気持ちとしても「本当に出産できるのだろうか」「丈夫な子が生まれるだろうか」など、様々な思いをめぐらす。特に現在のように情報が氾濫する社会では、たくさんの情報に惑わされやすい。そして中には病院や役所主催の「母親学級」や「乳幼児教室」等に顔を出したりもする。
この時期をひと言で言えば、ポジティブな感情とネガティブな感情を同時に強く持つのがこの時期の母親の特徴です。
一方父親は… つづく