子どもを輝かせるには 監督 齊藤 秀樹
確か昨年の「監督から」でも書いたと思いますが、私の教育理念の基本でもありますので、今一度書いていきたいと思います。
「子どもには無限の可能性がある」「子どもは誰でもよい芽を持っている」私は常々そう信じています。私たち指導者の仕事は、「子どもの中に秘められた無限の可能性を、発見し、引き出し、伸ばし、輝かせること」だと思っています。
私は休日を使って、SAA(白井アスレチックアカデミー)を30年以上にわたって主宰してきました。その中で今までに総勢170名を越えるの子どもたちを千葉県大会で優勝させ、全国大会に出場させてきました。そこで今までの陸上指導者としての経験から、私が「子どもを伸ばし、輝かせる」ために常に大切にしていることを3つ紹介したいと思います。
【活力ある子どもを育てること】
走ることが得意でも、苦手でも、適切な指導を受ければ誰でも必ず足は速くなります。そういう意味で私は教育の可能性を信じています。しかし、同じ指導を受けていても記録が飛躍的に伸びて、どんどん速くなっていく子もいれば、少しの向上で止まってしまう子もいるのは事実です。それはなぜでしょう。私は「活力」だと思っています。「活力」とは自分から「上手くなりたい。強くなりたい。できるようになりたい。勝ちたい。」という子ども自身が持っている「内面からのエネルギー」のことです。指導者がどんなに熱心に丁寧に上手に教えても、子ども自身に「活力」がないと決して子どもは伸びません。まず「活力ある子ども」を育てることが大切です。
活力ある子を育てるには「やればできる」という体験をたくさん味わわせることです。「やった。できた。わかった。うまくなった。バンザイ。」という体験は、子どもに自信を与え、子どもを大きく変容、成長させる原動力となります。
【夢を目標に変えること】
ノーベル賞受賞者で数学者の広中平祐氏はその著書の中で「自分で目標を決め、それに向かって努力するかしないかで、その結果に大きな違いが出る」と書いています。
よく「夢」と「希望」と「目標」を同じだと考えている人がいますが、実はこの三者には微妙な違いと順番があります。まず「夢」(できたらいいな)を持つことです。そしてその「夢」に向かってがんばり続けることで、可能性が出てきます。可能性が出てくると「希望」(できるかもしれない)という明かりが差し込み始めます。ただこの「希望」は未だ弱い望みなので、これを強い望み=目標に変えていかなくてはいけません。この希望を「目標」(やればできる)に変えることができたときに、人はすごい力を出すことができます。私が指導しているSAAの子どもたちは、常に千葉県大会で優勝し、全国大会に出場して、日本一になることを目標にして練習に取り組み、大会に望む子どもたちです。目標がもし「県大会に出場して入賞すること」だったらこんなに長年勝ち続けることはできなかったと思います。目標が実現できたときの感動・感激体験は、一生忘れられない宝物になり、これからの人生の生きる自信につながります。
【素直な心を持つこと】
運動能力や技術は、一生懸命に練習を積み重ねていけばある程度は身につきます。しかし、伸びる子どもの一番の資質は実は「素直さ」だと思っています。素直で謙虚な気持ちで練習に臨める子は、多くの人から指導や助言をもらうことができます。またその指導や助言に対して、すぐにそれを吸収し自分のものにすることができます。素直さは子どもを向上、成長させるとても大切な資質だと思います。素直な心を持った子どもたちを育てたいです。