シリーズ「子育て講座」③ 監督 齊藤 秀樹
【育児期】
この育児期は子どもが生まれてから小学校に入学する前までの乳幼児期を指しますが、親の在り方や問題点を語る前に、この時期は子どもの発達段階が深く関わるため、まずはそれぞれの発達段階を3つに区分して、その特徴と子育てのポイントを書いていきたいと思います。
《0才~1才半》
このころの子どもは100%受け身です。お腹が減ったらオギャアと泣き、おしめが汚れたらオギャアと泣いて、「何でもしてちょうだい」「何もできないんだから」…という時期です。この時期に、大人から心が安まるような優しい育てられ方をした子は、周りの大人は「よいもの」「安心できるもの」「信頼できるもの」という意識が染みつき、“安定根”ができます。
一般に「子どもを過保護にしてはいけない」と言いますが、あれは違います。乳児期の子育ては過保護の方がいいのです。ちょっとでも不快な気持ちを取り除いてやり、快い気持ちをたくさん味わった方がいいのです。
ウンチでおしめがベタベタになっているのに、放ったらかしにしていたり、「やかましい。泣くな。」等と言われて育つと、周りの人が自分にとって嫌なもの、安心できないもの、信頼できないものになり、安定した根っこが育ちません。
実はこの“安定根”があるかないかで、思春期に入って様々な問題行動や不安定な状態に陥ってしまっても、その立ち直り方が全く違うようです。
《1才半~3才》
この時期の子育てを一言で言うと「ほめて手をたたいて育てなさい」と言えるでしょう。自分で自分の身体を使い、上手くコントロールすることを通して、自主性や自立性を身につけます。
生まれて初めて、立ったり、歩いたり、物をつかんだりすることができるようになります。更に自分でご飯が食べられるようになり、パンツがはけるようになり、トイレでウンチやおしっこができるようにもなります。また食事の後に、「食べたものを台所に運んでね」と言えば、後片付けもできます。
「ほめて手をたたいて育てなさい」というのは、はじめてできた喜びを自信に変えてあげる時期だということです。この時期に、「○○してはダメ」「余計なことはするな」と言って、子どもの自信をつぶすような子育てが、子どもを自分では何もできないダメな子にするのです。
《3才~5才》
この時期の特長は、「母子分離」「第一反抗期」です。この時期の子どもは「はい」よりも「いや」という返事の方が多いものです。親の言うことに「はい」よりも「いや」が増えてくるのが正常な発達です。
幼稚園や保育園の子どもは、非常に活動的で、興味、関心、意欲がモコモコと出てきます。親が何かをしてあげようとすると、「いや」「自分でやる」と言います。親のしてあげることを素直に受け止める子の方がいい子だと思っていると、まだ幼児期前期の発達の扱いになります。「自分でする」(「ぶんで」「ぶんで」)と言ったときには、まず「やってごらん」です。
よく親子で「虫取り」や「つり」をしている姿を見かけますが、必死になって捕まえたり、釣ったりしているのは親の方で、子どもはその応援をしたり、手伝いをしたりしていることが多いようです。子どもにはまず「やってごらん」と言って、自ら木の上に登らせなければいけません。金八先生ではありませんが、「親」という字は、“「木」の上に「立」って、「見」ている”と書きます。親が必死にセミ取りをして、それを子どもが見守っていたのではあべこべです。 つづく