本番に強くなれ 監督 齊藤 秀樹
現在、連日世界陸上でのトップ選手の活躍に日本中が興奮し、一喜一憂しています。SAAでも全国大会を目指す100mとリレーの選手達が先週から平日に特別練習を開始しました。「やればできる」を信じて全力で努力する子どもたちを皆さんも応援してください。がんばります。
さて、よくオリンピックや世界大会などを見ていると、優勝候補(素質や技能が優れた選手)が、本番のプレッシャーや緊張感に負け、実力を出し切れずに負けてしまい、期待していた人々をがっかりさせることがあります。これらは全て精神力の弱さから来るものです。しかしこの精神力の弱さというのは生まれつきのもの(遺伝、血液型、性格)だとあきらめてはいけません。大きな試合やピンチの場面などで、普段通り自分の力を発揮する力は、日常の訓練で克服できるものなのです。この精神力を鍛える訓練を「メンタルトレーニング」と言います。
この精神力を科学的に強化するという訓練の始まりは、1950年代に旧ソ連で宇宙計画の一環として始まったと言われています。それが東欧諸国に広がりスポーツの世界に応用したことで一気に競技力を伸ばしました。その後アメリカなどが取り入れ、次第に全世界に広がっていきましたが、日本では1985年頃からようやくスタートしました。当時の日本のスポーツ界は「試合に勝てないのは気合いが足りないから」という精神論が古くから根付いていたため、研究や実践はかなり世界から遅れてしまいました。
しかし現在多くのスポーツ関係者がこのトレーニングに注目し実際に成果を上げています。これは身につけておくと、試合、運動会、コンサート、試験、受験…様々な場面で応用でき、とても有効ですのでその一部を紹介いたします。
【イメージトレーニング】
大会や試合がある前日には、知らず知らずのうちに神経質になり緊張感も高まってきます。そんな時は頭の中で、「自分のすばらしいプレーや活躍する姿を思い浮かべる」ことです。過去に一番がんばった姿や勝利の瞬間のイメージなどが、どんどん頭の中に浮かんでいけばしめたものです。例えば「スタートの瞬間に素早く反応し、ぐんぐんスピードが上がって他の選手を引き離していく。、なんだかいつもより体が軽く、足もよく動き、あっという間に1位でゴールする」そんな姿を思い浮かべるのです。ただし、決して失敗したり転んだりする姿を思い浮かべてはいけません。せっかくのイメージトレーニングがダメージトレーニングになってしまいます。
【ルーティン】
この技法を取り入れていることで有名なのが、野球のイチロー選手です。彼はバッタボックスに入ると必ずユニホームの肩や袖をつまみ、バットを立ててピッチャーの方へ向けます。彼は毎回行うこの同じ動作で平常心を保っているのです。その後はラグビーの五郎丸選手の動きが話題になりましたが、練習からいつも同じ動作を繰り返すことで自分の心をコントロールすることができます。
【深呼吸】
さあいよいよ100メートルの決勝です。スタートの直前は胸が激しく高鳴ってきます。そんな時には大きく深呼吸を1~2回するとよいでしょう。息を吸うときは腹式呼吸で胸よりもお腹に空気を入れ、吐くときは全身の筋肉をリラックスさせます。すると不思議と緊張が取れ、集中力が高まってきます。
さてこれから始まるの秋の陸上大会や運動会、合唱祭などで是非実践してみてください。